ハイリスク妊娠

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ハイリスク妊娠とは、妊娠中・出産中・産後、母体または胎児(新生児)に、健康上の問題や合併症を悪化させる危険性がある、もしくは死の危険があるなど、なんらかのリスクを伴う可能性のある妊娠を意味します。

 
ハイリスク妊娠の危険因子

以下のような要素がハイリスク妊娠の一因となり得ることがあります:

  • 流産、早期新生児死亡の既往
  • 早産(妊娠37週未満の出産)あるいは過期妊娠(妊娠42週以上の妊娠週数の延長)
  • 2回以上の流産の既往
  • 2,500グラム以下の低出生体重児あるいは4,000グラム以上の高出生体重児の出産既往
  • 胎児発育不全の既往
  • 知的障害(ID、精神遅延:MR)児の出産既往
  • 子癇前症の既往
  • 過去に 子宮摘出術 やその他産婦人科手術を受けたことがある
  • 多胎妊娠
  • 骨盤位(逆子)や横位などの胎位異常(34週以降)
  • 16歳未満の低年齢妊娠または40歳以上の高齢妊娠
  • 妊娠中の膣出血
  • 血液型がRhマイナスである
  • 妊娠中の骨盤内腫瘤の形成
  • 妊娠高血圧症候群(定義:血圧が140/90 mmHg以上)
  • インスリン依存型糖尿病
  • 腎疾患
  • 心疾患
  • 薬物・アルコール乱用
  • 貧血、甲状腺機能亢進症、全身性エリテマトーデス(SLE)、サラセミア、てんかん、結核等の内科疾患
  • HIV感染症/エイズ 等の性感染症(STD)の罹患またはB型肝炎ウイルス保有者

これらの危険因子がある方で妊娠中あるいは妊娠を計画している場合には、安全かつ正確で的確な治療や診療を確実に受けることができるよう、経験や知識が豊富な医療スタッフがいる適切な医療設備の整った病院で診察や治療を受けるようにしましょう。

 
ハイリスク妊娠の診断

病院での妊婦健診の際に、ハイリスク妊娠の可能性を診断するリスク評価を行います。その際、病歴から可能性のある危険因子を分析するとともに、以下のような通常の出生前スクリーニング検査やその他の追加検査を行います:

  • 尿蛋白、尿糖のレベルを確認する尿検査。高血圧かつ蛋白尿を伴う場合、子癇前症の可能性があります。また、尿糖の数値が高い場合は妊娠糖尿病が疑われるため、さらなる血糖値検査を行い、糖尿病の有無を確定します。
  • 体重・身長の評価
  • 高血圧の検査
  • 胎児の大きさを推測するための子宮底長計測
  • 医師が推奨するその他の検査・評価

 
妊娠中の胎児の評価

ハイリスク妊娠と診断された場合には、妊娠期間を通じて厳重な管理を行いながら 妊婦健診 を受ける必要があるとともに、リスクのない方よりも頻繁に診察を受ける必要があります。またハイリスク妊娠の場合には、その後の治療計画を立てる目的で、胎児の異常を確認する追加検査を受ける場合があります。胎児モニタリングおよび評価のための検査には次のようなものがあります:

  • 胎児超音波検査:高周波音波を利用した検査で、母体や胎児に悪影響を及ぼすことなく、妊娠状態、胎児・胎盤の異常や、胎児の形態・生理機能、子宮、胎盤、臍帯、羊水に関する情報を集め、問題の有無を確認します。
  • ダウン症候群の出生前診断には以下のようなさまざまな方法があります:
    • 妊娠初期コンバインド検査: 妊娠11~13週を対象とする検査で、超音波検査(胎児の首の後ろのむくみ:NTの計測)と採血を行います。ダウン症候群の85パーセント(偽陽性率5パーセント)を検出することができます。
    • 妊娠第 2期出生前クアドラプル検査: 妊婦健診を第1期が過ぎてから受け始めた場合に妊娠15~20週を対象として行う血液検査で、最高85パーセント(偽陽性率5パーセント)の検出確率となっています。
    • NIFTY検査(無侵襲的胎児トリソミー検査):母体の血流にある胎児細胞フリーDNAを分析することによりダウン症候群のスクリーニングを行う、最新の染色体解読技術を用いた検査です。この手法では、ダウン症候群のようなトリソミーという異数体を99パーセント超の精度( 偽陽性率1パーセント以下)で検出することができます。 妊娠12週以降であればいつでも対象となり、採血から2~3週間以内に結果がわかります。
  • 羊水穿刺(羊水検査):妊娠 18~20週の間に行われ、染色体異常、サラセミア、その他遺伝性疾患等、さまざまな疾患の出生前診断のために胎児の細胞を調べる検査です。
  • その他医師の推奨する出生前検査・スクリーニング:絨毛検査( CVS)、臍帯穿刺(別名、経皮的臍帯血採取:PUBS)、ノンストレステスト(NST)など

ハイリスク妊娠の予防および治療

ハイリスク妊娠の場合には、母体、胎児双方の安全と健康のために、出産前から自己管理をしていくことが非常に大切となります。健康に気遣い細心の注意を払っていくことは、妊娠中のご自身の幸せやお子さんの健康につながります。母体および胎児の状態によって出生前に必要なセルフケアはそれぞれ異なりますので、医師と相談をしながら、正しい自己管理をするようにしましょう。以下のことは重要ですので、行うようにしましょう:

  • 夫婦ともに妊娠前の健康診断を受け、妊娠に備えましょう。健康上の問題が見つかった場合には妊娠前に必要な手順を踏み、治療や管理をするようにします。例えば高血圧の方は、妊娠する前に必要となる手順を踏んで血圧を正常範囲内に抑える必要があります。肥満の方は、健康的な食事や運動を実施することにより、妊娠前に体重を減らすよう努めなければなりません。
  • 妊娠を計画している方は妊娠の2~3ヶ月前から葉酸を摂取し、二分脊椎やその他神経管欠損症などの先天性奇形の予防に努めてください。
  • 妊娠が判明したらすぐに医療機関に受診して病歴や既往歴を知らせ、妊娠期間中に適切な診療・治療計画が立てられるようにしましょう。妊娠中は定期的に医師の診察を受ける必要があります。
  • 喫煙、アルコール摂取、麻薬の使用は避けてください。
  • 胎児にマイナスの影響が出る可能性のあるような旅行やその他の活動は回避するよう努めましょう。
  • 健診のたびに尿・体重・血圧の検査を受け、妊娠中に起こる可能性のある異常や合併症の経過観察を受けてください。
  • 妊娠中は健康的な体重の維持に努め、痩せ過ぎや太り過ぎとなることのないようにしましょう。
  • 血糖値の高い方は、健康的な食事や定期的な運動を心がけて血糖値をコントロールしましょう。医師に相談しながら妊娠に悪影響のないような運動をするともに、定期的に血糖値を調べるようにしましょう。
  • ストレスや不安を減らすように努めましょう。
  • 十分な休息を取ってください。

 
受診の必要のある症状

次のような症状に気づいた場合には、異常の有無の確認や治療のために、医師の診察を受ける必要があります:

  • 頻繁な頭痛
  • 腹部の痛みやけいれん
  • 胃のサイズが通常より大きいあるいは小さい
  • 膣出血
  • 妊娠5~6ヶ月以降の胎動の減少あるいは胎動がない場合

 
ハイリスク妊娠のケアに関わる医療専門家

  • 妊娠全般およびハイリスク妊娠に関する知識と経験を兼ね備えた産婦人科医、そして新生児専門医(小児科の下位専門分野で、新生児、特に先天性異常や疾患のある新生児の医療ケアを専門とする)が、ハイリスク妊娠が予想される患者様の担当医となり、妊娠から出産までの母子のケアを行います。
  • 出産時には、あらゆる場面において産婦人科医、麻酔科医、分娩室の看護師、 新生児集中治療室(NICU) の看護師といった、新生児の救命救急の知識と経験を積んだ医療専門家から成るチームが注意深く母体の観察を行い、24時間にわたって最善のサポート体制を提供しています。
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